「プチプラだけど評判のビューラー買ってみたから試させなさいよ」


伏黒がぼおっとコーヒーを飲んでいると、釘崎が何か光るものを手に持ちながら横に立った。
当たり前だが金槌ではない。
何か華奢なものだ。



「プチプラ?」


あまり聞きなれない言葉に伏黒は聞き直す。



「そこか!?」


はぁ!?というように釘崎は一瞬顔をしかめたあと、まあいいわと光るものがある右手を見せた。



「安いけど、機能もばっちり。でも、自分で見てみたって違いがよくわかんないからあんたで試させて」


ちゃんと説明をしてくれる。
乱暴に見えて、釘崎は面倒見がいいのだ。


だが、釘崎が何をしたいのかが伏黒には分らない。



「どうするんだ?」


「ビューラー。これでまつげを挟むのよ」



釘崎はビューラーをカシャカシャさせながら、ほらやるわよと手元を近づけてくる。



「何のためにそんなこと...」


まさかの言葉に伏黒は身を引いた。

伏黒はまつげにそんなことをしたことなど、一度もない。



「目を大きく見せるの。可愛くなれるの」



釘崎は右手にあるビューラーを見た後、改めてこちらを向き近づいてくる。



「あんた、まつげ長いし丁度いいわ」



「気を付けるけど、まぶた挟んだらごめんね」



「なっ!」



「動かないで」




まだいいと言っていない!と伏黒は内心思いつつも目というデリケートな場所のため
動くに動けない。


それに釘崎は真面目な顔だ。



突然の行動とは裏腹に真剣に、慎重にしている。




伏黒のまつげをビューラーで挟み、数回きゅっとする。




時間にしたら、2秒か3秒だろうが長い時間に感じた。



釘崎が離れていく気配がする。


少しまつげが引っ張られるような感じがしたが、それだけで済んだようだ。





「はーっ!?何その目力アップ!!喧嘩売ってんのかこら。買うぞ。」




釘崎の情緒はせわしい。

また、伏黒を見つつ顔をしかめている。


伏黒には分らないが、釘崎の怒りを買ったらしい。




「謝れ。全女子に謝れ。」



「悪い。」



「真面目か。」




釘崎は大きなため息をつくと、「ありがと」と言葉にした。




「いいわ、このビューラー。買ってよかった。」



またビューラーをカシャカシャと音をさせると、釘崎は満足げに笑った。



どうなったのかは分からないが、釘崎の期待には応えられたようだ。


伏黒は安心した。








「ねぇ、伏黒。昨日新しくリップ買ったんだけど...」








私のきれいでかわいいお人形